新型コロナウイルスの感染拡大策として、世界各国で人々の移動制限が続けられています。日本だと、緊急事態宣言が発令された4月7日から、休業する店舗が増え始め、ゴールデンウィークに該当する4月29日から5月6日には、チェーン店も含め、ほとんどと言っていいくらい多くの店舗が休業しています。
経営に余裕がある店舗であれば、休業中であっても従業員に給与を支払うかもしれません。しかし多くの店舗は、休業(従業員は仕事をしていないこと)を理由に従業員に給与を支払わないでしょう。店舗を休業してしまえば、売上(販売額)がゼロになってしまうので、従業員に給与を支払いたくても支払えない、と言うこともできます。
緊急事態制限は、5月6日までとされていましたが、どうやら5月末くらいまで延長されるようです。このため休業する店舗の多くは、今後も休業を続けざるを得ないでしょう。そして、休業中の店舗で働いていた従業員の多くも、給与を受け取れない状態が続くことになりそうです。
いずれ、緊急事態宣言は解除され、店舗は営業を再開できる状態になります。しかし、休業を続けた店舗の中には、休業中の家賃支払い負担に耐えきれず廃業する店舗もあるでしょう。
営業を再開できたとしても、売上がすぐに、新型コロナウイルスの感染が拡大する前の水準に戻ると期待するのも難しいでしょう。緊急事態宣言が解除された後も、新型コロナウイルスの感染リスクを懸念する人は、一定数存在するとみられ、混雑する店舗を避ける傾向は強まるかもしれません。正社員を中心に夏のボーナスが減らされる可能性は高いと予想されており、店舗での買い物を抑える(節約する)傾向も強まりそうです。
こうしたことを考えると、休業中の店舗で働いていた方々の所得(給与)は、たとえ緊急事態宣言が解除されたとしても、すぐには回復せず、減ったまま、もしくは、ゼロのまま、と考えた方が良さそうです。
これは休業中の店舗で働いていた方々に限った話ではありません。店舗がなくなってしまう、もしくは、店舗の売り上げが減ったままである、ということは、仕入れなどで店舗と取引をしていた企業の売上も減ってしまうことを意味します。それは、店舗と取引をしていた企業で働いていた方々の所得(給与)も減ってしまう可能性が高い、ということでもあります。
経済というものは、ある種のドミノ倒しのようなもので、ある部分に起きた負のショックは、時間とともに他の部分に波及します。今回の場合、多数の店舗が休業を余儀なくされたという負のショックは、そう遠くない将来に、経済全体に行き渡ると予想されます。
つまり、すでに所得が減ってしまっている方も多くいらっしゃるでしょうが、今後はさらに多くの方々が、所得が減ってしまうと考えたほうがよさそうです。
今回の景気後退(不況)は、リーマン・ショックを超え、第二次世界大戦や1929年の大恐慌が例に出されるくらい深刻なインパクトがあると言われています。このため、人々の所得の減り方も大きく、失業される方も多いと思われます。そして新しく仕事を得たとしても、以前と同じ水準の給与を得ることは難しく、低い所得を甘受しなければならない方も多くなると予想されます。
所得が減ってしまうことは、生活が苦しくなることを意味します。所得に応じて生活レベルを落とすことも必要でしょうが、お子さんがいる、介護を必要とする親族がいる、などの理由で所得が減ったからと、所得が減った分だけ生活レベルを並行的に落とせる方は少ないでしょう。
そのため、これからは、減った所得をカバーするために、別の仕事を新しく始めて、別の所得を得る試みが強まるかもしれません。
以前ですと、このような別の所得を得る試みのことを、副業、というキーワードで語られていました。ただ、副業(副次的な仕事)、という言葉は、主業(主な仕事)があって、成り立つものです。
今回の不況では、主業と言えるほどの所得を一つの仕事で得られる方は、比較的恵まれた方といえるかもしれません。一方で、複数の仕事をこなすことで、トータルでみた所得を以前の水準に近づける方が増えるような気がします。つまり、副業、ではなく、複業、をもつ方が増える、という見方です。
複業しなければ生活レベルを維持できない、という社会は、以前と比べると大変厳しいものに感じるかもしれません。しかし、いま目の前で起きていることを考えると、それは、たとえ厳しいものであっても、我々が今後生きていく社会の姿のようにも思えます。
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